STP分析とは?やり方と企業事例をわかりやすく解説

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「新商品のターゲットは本当にこの層で良いのだろうか?」
「競合が増える中、どうやって自社を選んでもらえばいいのか?」

このような悩みを抱えていませんか。その課題を解決するフレームワークとしてSTP分析がおすすめです。

STP分析とは、市場を細分化し、狙うべきターゲットを定め、競合との差別化を図るマーケティングの基本フレームワークのことです。

「誰に、どのような価値を届けるか」という戦略の根幹を論理的に導き出せます。

本記事では、STP分析の基本知識から具体的なやり方、有名企業の成功事例、実施時の注意点まで初心者向けにわかりやすく解説します。

この記事を読めば、自信を持ってマーケティング戦略を立案できるようになるでしょう。

また、下記の記事にてマーケティング戦略の詳細をまとめています。定義や重要性、具体事例までまとめていますので、STP分析の前にマーケティング戦略そのものを理解したい方は、ぜひ参考にしてみてください。

目次

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STP分析とは?

STP分析とは、Segmentation(セグメンテーション)、Targeting(ターゲティング)、Positioning(ポジショニング)の頭文字を取って作られた、マーケティングの代表的なフレームワークです。

市場の顧客をグループ分けし(S)、その中から狙うべき市場を定め(T)、競合にはない独自の立ち位置を明確にする(P)ことで、効果的なマーケティング戦略を策定できます。

STP分析の一連のプロセスを経ることで、競合他社との不要な競争を避け、市場における優位性の確立が可能です。

STP分析の3つの要素

STP分析は3つの要素で構成されています。

  • Segmentation(セグメンテーション)
  • Targeting(ターゲティング)
  • Positioning(ポジショニング)

それぞれの要素を順に解説します。

Segmentation(セグメンテーション)

セグメンテーションとは、市場を顧客の特性やニーズに基づいて細分化するプロセスのことです。

市場全体を一括りにするのではなく、類似した特徴をもつ顧客グループに分けることで、各セグメントのニーズや購買行動を正確に把握できます。

市場は大きく分けて「消費財市場(BtoC)」と「生産財市場(BtoB)」の2つに分類されます。

この2つで分ける理由は、購買の意思決定プロセスや重視する要素が大きく異なるためです。

個人消費者は感情や価値観、ライフスタイルに基づいて購入を決定するのに対し、企業は合理的な判断、費用対効果、業務上の必要性に基づいて意思決定を行います。

そのため、それぞれの市場で使用するセグメンテーションの変数(分類軸)も異なってくるので、それぞれの主な変数を見てみましょう。

【消費財市場(BtoC)の4つの変数】

変数分類説明具体例
人口動態変数(デモグラフィック)年齢
性別
家族構成
職業
収入
などの基本情報
30代男性
年収600万円以上
子供2人の家族
地理的変数(ジオグラフィック)
地域
都市部/郊外
などの地理的条件
東京都在住
関東圏勤務
人口50万人以上の都市
心理的変数(サイコグラフィック)ライフスタイル
価値観
性格
購買動機など
環境意識が高い
ステータス重視
健康志向
行動変数(ビヘイビアル)購買頻度
使用状況
ブランドロイヤリティなど
週3回以上利用
価格より品質重視
リピーター

【生産財市場(BtoB)の4つの変数】

変数分類説明
人口動態軸業種、業界、企業規模、資本金、売上高など
オペレーティング軸使用量、利用状況、使用頻度、技術レベルなど
購買アプローチ軸購買意欲、購買方針、決裁権の有無、購買組織など
状況要因軸緊急性、受注量、納期、特定用途など

なお、BtoB企業であっても、実際に商品・サービスを扱うのは企業の担当者(個人)です。そのため、生産財市場の変数に加えて、消費財市場の変数(担当者の年齢、役職、決裁権の有無など)も組み合わせることで、より緻密な分析が可能となります。

また、市場を細分化した後は、どのセグメントが自社にとって魅力的で実現可能性が高いかを評価する必要があります。そこで活用するのが4Rの原則または6Rの原則です。

【4R/6Rの原則】

  • Rank(優先度):優先順位の高いセグメントか
  • Realistic(有効性):十分な売上・利益が見込める市場規模か
  • Reach(到達可能性):製品やメッセージを届けられるか
  • Response(測定可能性):効果を測定できるか
  • Rate of growth(成長性):市場の成長が見込めるか ※6Rの場合
  • Rival(競合状況):競合のシェアや強さはどうか ※6Rの場合

これらの原則を使うことで、複数のセグメント候補から「どこを優先すべきか」が明確になり、限られたリソースを効率的に使えるようになります。

Targeting(ターゲティング)

ターゲティングとは、セグメンテーションで細分化した市場の中から、自社が狙うべき最適な市場を選定するプロセスです。自社の強みが活かせたり、自社ブランドのコンセプトにマッチする市場を選んだりすることが重要となります。

ターゲティングには3つの手法があり、企業規模や競合状況によって使い分けます。

【3つのターゲティング手法】

手法説明適している企業
集中型マーケティング特定のセグメントに絞って商品・サービスを提供小規模企業
スタートアップ
専門性の高い事業
差別型マーケティング複数セグメントにそれぞれ異なる商品・サービスを提供中堅・大手企業
幅広い市場をカバーしたい企業
無差別型マーケティングセグメントに関係なく同一商品・サービスを提供大企業
潤沢な資金がある企業

市場を選定する際は、市場の魅力度(規模・成長性)と自社の適合性(強み・リソース)の両面から評価することが大切です。

Positioning(ポジショニング)

ポジショニングとは、ターゲット市場における自社の立ち位置を明確にするプロセスです。競合他社と比較して、どのような差別化を図るか、顧客に対してどのような価値を提供できるかという戦略を立てます。

ポジショニングを可視化する際には、ポジショニングマップの作成が効果的で、作り方としては下記のような流れとなります。

  1. 軸の決定
    ┗顧客が商品選択時に重視する2つの軸を選定
    (例:価格×品質、機能性×デザインなど)
  2. 競合のプロット
    ┗決めた2軸でマップを作り、競合他社の位置を配置
  3. 自社のプロット
    ┗競合の位置を踏まえ、空白地帯を見つけて自社のブランドの立ち位置を決定
  4. 差別化要素の明確化
    ┗自社の独自性や優位性を言語化

ポジショニングマップを作ることで、市場における自社のユニークな立ち位置が視覚的に明らかになり、伝えるべきメッセージが明確になります。

STP分析で確立したポジショニングを顧客の心に定着させるには、一貫したブランディング戦略が不可欠です。差別化されたポジションを効果的に訴求し、競合優位性を築くブランディングの手法について詳しく知りたい方は、こちらの記事もあわせて確認してみてください。

STP分析を行う3つの目的

STP分析を実施する主な目的は以下の3つがあります。それぞれの目的を理解することで、自社でSTP分析を活用するイメージが明確になるでしょう。

  1. 市場における顧客ニーズの把握
  2. ターゲット市場へのアプローチの最適化
  3. 競合他社との差別化ポイントの洗い出し

①市場における顧客ニーズの把握

STP分析の第一歩であるセグメンテーションを行うことで、市場における顧客の属性や割合を整理でき、顧客ニーズを正確に把握できます。

市場を年齢や性別、職業、地域、収入、ライフスタイルなどの基準で細分化することで、どのような顧客がどれくらい存在するのかが明確になります。

各セグメントのニーズや特性を理解することで、より具体的なペルソナ(理想的な顧客像)の設定が可能です。

結果的に、自社製品やサービスにマッチする顧客層を発見し、効果的なマーケティング施策の立案に役立ちます。

②ターゲット市場へのアプローチの最適化

ビジネスでは人材や時間、予算などのリソースに限りがあるため、より効率的かつ効果的に顧客にアプローチすることが重要です。

ターゲットを明確にすることで、PRや商品開発、販売促進活動に最適なリソース配分が可能となります。

結果的に、マーケティングコストを削減し、投資対効果(ROI)を最大化した無駄の少ない効果的なアプローチが実現できるでしょう。

③競合他社との差別化ポイントの洗い出し

ポジショニングを行うことで、競合他社との差別化を図れるポイントを明確化できます。

市場に商品やサービスをリリースする際、競合他社と同じ内容を打ち出しても顧客にとっての付加価値にはなりません。

自社の強みや独自性を明確にし、顧客に対して魅力的に伝えることで、市場での位置付けがはっきりします。

自社商品やサービスが顧客に与える価値と、他社に対する優位性を把握することで、競合他社との競争を避けられる市場を見つけられるでしょう。

STP分析を行うタイミング

STP分析をいつ実施すべきか、マーケティング戦略立案の流れにおける位置づけと、特に有効な場面について解説します。

  • マーケティング戦略立案の流れ
  • STP分析が特に有効な場面

順に見ていきましょう。

マーケティング戦略立案の流れ

マーケティング戦略の立案は、一般的に以下の3つのステップで進みます。STP分析は「基本戦略」のステップで活用するフレームワークです。

  1. 環境分析
    ┗自社を取り巻く環境を把握(PEST分析、3C分析、SWOT分析など)
  2. 基本戦略
    ┗市場を細分化し、ターゲットを定め、ポジションを決定 ←ここで実施
  3. 具体的施策
    ┗具体的な施策を決定(マーケティングミックス(4P/4C分析))

つまり、自社の内部環境と外部環境を分析した後に、STP分析を用いて戦略を策定します。その後、マーケティングミックス(4P)によって戦略を実行するための具体的施策を決めるという流れです。

ただし、STP分析と4Pは連動しているため、実際には両者を同時並行で実施するのが効率的かつ効果的でしょう。

マーケティング戦略の詳細はこちらの記事でも詳しく紹介しています。気になる方はチェックしてみてください。

STP分析が特に有効な場面

STP分析はさまざまな場面で活用できますが、特に以下のような状況で威力を発揮します。

  • 新規事業の立ち上げ時
    ┗狙う市場や開発すべき商品・サービスを決める初期戦略設計に役立つ
  • 新商品・新サービスの開発時
    ┗ターゲット顧客を明確にし、市場ニーズに合った製品開発ができる
  • 市場環境が大きく変化した時
    ┗消費者ニーズの変化や競合の動向に対応した戦略の見直しができる
  • 既存事業の見直し・改善時
    ┗商品やサービスのどの特徴を強みとして打ち出すべきか再定義できる
  • 競争優位性の再構築が必要な時
    ┗競合との差別化ポイントを再発見し、新たなポジション確立が可能

また、定期的(年1〜2回程度)にSTP分析を見直すことで、市場変化に対応し続けることができます。

【5STEP】STP分析のやり方とは

ここからは、STP分析の具体的な進め方を5つのステップで解説します。

  1. 分析の目的とゴールを明確にする
  2. 自社の商品・サービスを把握する
  3. 市場を細分化する(セグメンテーション)
  4. ターゲット市場を選定する(ターゲティング)
  5. 自社の立ち位置を決定する(ポジショニング)

各ステップを丁寧に進めることで、効果的なマーケティング戦略を導き出せるでしょう。

STEP1:分析の目的とゴールを明確にする

STP分析を実施する前に、なぜこの分析を行うのか、何を目的とするのかを明確にしておきます。目的が曖昧なまま分析を進めると、結論がブレてしまい、効果的な戦略立案ができません。

売上金額や顧客数の目標を数値化するなど、具体的な目的を設定しましょう。

たとえば「新商品で初年度売上3億円を達成する」「既存顧客の解約率を20%削減する」といった明確なゴールを設定することで、分析を行う際の軸として意識できます。

STEP2:自社の商品・サービスを把握する

事業の目的とゴールに加えて、現状どんな商品・サービスを提供しているのかを整理します。

その商品・サービスが、どの企業の、どんな悩みを、どのように解決するものなのか、言語化してください。

STP分析では、最終的に自社がどんな価値を提供するかを結論づけます。今ある自社の商品・サービスはそのまま使えるのか、一から企画し直す必要があるのかを検討する際に、ここでの把握が大きな意味をもつでしょう。

STEP3:市場を細分化する(セグメンテーション)

事業の目的とゴール、商品・サービスを整理したら、ターゲットとする顧客の特徴やニーズといった共通項目で市場を細分化します。細分化することで、自社の提供する価値とマッチする市場分野が見つけやすくなります。

前述の4つの変数(人口動態変数、地理的変数、心理的変数、行動変数)を使って市場を分類しましょう。また、これまでの顧客データや業界レポート、官公庁の統計データなどを活用すると、より正確な分析が可能です。

セグメント化した後は、4R・6Rの原則に基づいて各セグメントの有効性を評価します。「このセグメントは十分な市場規模があるか」「実際に商品を届けられるか」「効果測定が可能か」といった観点から検証してください。

STEP4:ターゲット市場を選定する(ターゲティング)

細分化した市場の中から、自社が狙うべき最適な市場を選定します。市場を定めるポイントは、「規模が大きく成長中の市場であり、かつ競合企業も少なく、顧客ニーズが見込まれる」部分を見つけ出すことです。

ターゲット市場を選ぶ際は、以下の観点から評価しましょう。

  • 市場規模は十分か(Realistic Scale)
  • 市場は成長しているか(Rate of Growth)
  • 競合の状況はどうか(Rival)
  • 顧客の優先順位は高いか(Rank)
  • 製品・サービスを届けられるか(Reach)
  • 効果測定ができるか(Response)

また、集中型・差別型・無差別型のどのマーケティング手法を採用するかも、この段階で決定します。自社のリソースや競合状況を踏まえ、最適な手法を選択してください。

STEP5:自社の立ち位置を決定する(ポジショニング)

最後に、選定したターゲット市場における自社の立ち位置を明確化します。競合他社の調査を行い、自社がどのようなポジションを取るべきかを検討しましょう。

ポジショニングマップを作成し、顧客が重視する2つの軸(価格×品質、機能性×デザインなど)で競合と自社をグラフ化します。競合が少ない「空白地帯」を見つけ、そこで自社の強みを活かせるかを検証してください。

最終的に、ターゲット顧客に対して「この商品・サービスは○○な点で他社と違う」と明確に伝えられる差別化ポイントを言語化します。このメッセージが、今後のマーケティング施策の核となるでしょう。

STP分析と組み合わせるべき他のフレームワーク

STP分析の効果をより高めるためには、他のマーケティングフレームワークと組み合わせることが重要です。環境分析と施策立案の2つのフェーズで活用できるフレームワークを紹介します。

環境分析で使うフレームワーク

STP分析を実施する前段階で、自社を取り巻く環境を把握するためのフレームワークです。これらを活用することで、より精度の高いSTP分析が可能となります。

  • PEST分析
  • 3C分析
  • SWOT分析
  • 5フォース分析

それぞれ見ていきましょう。

PEST分析

PEST分析は、Politics(政治)、Economics(経済)、Society(社会)、Technology(技術)の4つの要因から外部環境を分析するフレームワークです。

法律や規制の動向、経済成長率、人口動態の変化、技術革新など、企業経営に影響を与えるマクロ環境の変化を把握できます。

PEST分析で得られた外部環境の変化は、セグメンテーションの軸を決める際や、市場の成長性を評価する際に活用できるでしょう。

3C分析

3C分析は、Customer(顧客・市場)、Competitor(競合)、Company(自社)の3つの観点から経営環境を分析するフレームワークです。

顧客ニーズや市場動向、競合他社の戦略、自社の強み・弱みを整理できます。

3C分析で得られた情報は、STP分析におけるターゲティングやポジショニングの精度を高めるのに役立ちます。特に、競合分析の結果は自社のポジション決定に直結するため、丁寧に実施しましょう。

SWOT分析

SWOT分析は、Strengths(強み)、Weaknesses(弱み)、Opportunities(機会)、Threats(脅威)の4要素で内部環境と外部環境を分析するフレームワークです。

自社の強みを活かせる機会を見つけたり、弱みと脅威の組み合わせを回避する戦略を立てられます。

SWOT分析の結果は、STP分析における自社の強みを活かせる市場の選定や、競合との差別化ポイントの発見に活用できるでしょう。

5フォース分析

5フォース分析は、競合他社、新規参入業者、売り手、買い手、代替品の5つの要素から業界の競争環境を分析するフレームワークです。

業界全体の収益性や競争の激しさを把握し、自社にとっての脅威性と対抗策を検討できます。

5フォース分析で業界構造を理解することで、STP分析における市場の魅力度評価や参入障壁の検討に役立てられます。

施策立案で使うフレームワーク

STP分析で戦略を策定した後、具体的なマーケティング施策へと落とし込む際に活用するフレームワークです。

  • 4P分析
  • 4C分析

それぞれ見ていきましょう。

4P分析

4P分析は、Product(製品)、Price(価格)、Place(流通)、Promotion(販促)の4つの要素を組み合わせて具体的なマーケティング施策を設計するフレームワークです。

企業視点で「何を、いくらで、どこで、どのように売るか」を決定します。

STP分析で定めたターゲット顧客とポジショニングに基づいて、適切な製品開発、価格設定、販売チャネル、プロモーション方法を決定しましょう。

4C分析(マーケティングミックス)

4C分析は、Customer Value(顧客価値)、Cost(コスト)、Convenience(利便性)、Communication(コミュニケーション)の4つの要素から顧客視点でマーケティング戦略を立案するフレームワークです。

4Pを顧客目線で再定義したものと言えます。

顧客が求める価値、顧客が負担するコスト(金銭的・時間的)、購入の利便性、双方向のコミュニケーションを重視することで、より顧客中心のマーケティング施策が実現できるでしょう。

STP分析の成功事例|有名企業5社

実際にSTP分析を活用して成功した有名企業の事例を5つ紹介します。各企業がどのようにS・T・Pを実践したのか参考にしてください。

  • ユニクロ
  • スターバックス
  • マクドナルド
  • ニトリ
  • パナソニック

一例としてそれぞれ見ていきましょう。

事例1:ユニクロ|ベーシック志向の市場を開拓

株式会社ユニクロは、「LifeWear(究極の普段着)」をコンセプトに、独自のポジションを確立しました。

【ユニクロのSTP分析例】

要素内容
S(セグメンテーション)性別や年齢ではなく、「カジュアル/フォーマル」「トレンド/ベーシック志向」で細分化
T(ターゲティング)カジュアル・ベーシック志向の顧客層を狙う集中型マーケティング
P(ポジショニング)手頃な価格で高品質なベーシック衣料を提供する企業

ユニクロは従来のアパレル業界の常識(年齢・性別での細分化)を覆し、新たな指標でセグメンテーションを実施しました。

「長持ちする高品質の衣類が欲しい」「低価格と機能性を兼ね備えた衣類が欲しい」というニーズに着目し、幅広い層から長く支持されるシンプルで高品質なアイテムを低価格で提供することで成功しています。

事例2:スターバックス|サードプレイス戦略

スターバックスコーヒージャパン株式会社は、「家でも職場でもない第3の居場所(サードプレイス)」をコンセプトに独自のポジションを築きました。

【スターバックスのSTP分析例】

要素内容
S(セグメンテーション)エリア、社会的地位、職業、年齢層(10代後半〜70代)で細分化し、さらに時間帯や平日・休日でも分類
T(ターゲティング)大都市・主要都市で平均以上の収入を得るユーザーを中心に、時間帯別にターゲットを設定(早朝:出勤前のビジネスパーソン、昼間:ノマドワーカー、夕方〜夜間:帰宅前のビジネスパーソン、休日:若い女性など)
P(ポジショニング)都会的で高級感がありながら長居できる空間、オリジナルグッズ販売、質の高い接客でサードプレイスを提供

スターバックスは、単なるコーヒーショップとしてではなく、「くつろぎと自分らしさを取り戻せる場所」として価値を提供しています。徹底的なセグメンテーションと時間帯別のターゲティングにより、効果的なマーケティング戦略を展開していると言えるでしょう。

事例3:マクドナルド|多様なニーズに対応

日本マクドナルド株式会社は、幅広い顧客層に対応する差別型マーケティングで成功しています。

【マクドナルドのSTP分析例】

要素内容
S(セグメンテーション)年齢層、職業、利用シーン、利用目的、地域などで細分化
T(ターゲティング)ファミリー層、学生、ビジネスパーソン、シニア層など複数セグメントをターゲットにする差別型マーケティング
P(ポジショニング)手軽・低価格・迅速なサービス提供、モバイルオーダー・ドライブスルー・デリバリーなど非接触型サービスの充実

マクドナルドは、各セグメントのニーズに応じたメニュー開発(朝マック、ハッピーセット、期間限定商品など)や、利用シーンに合わせたサービス提供を実施しています。特にコロナ禍における非接触型サービスへの迅速な対応は、同社の競争優位性を大きく高めました。

事例4:ニトリ|価格と品質のバランス

株式会社ニトリホールディングスは、「お、ねだん以上。」のキャッチフレーズで知られる家具・インテリア市場でのリーディングカンパニーです。

【ニトリのSTP分析例】

要素内容
S(セグメンテーション)特定の顧客層に絞らず、あらゆる人々を対象としながら、出店地域や店舗規模で調整
T(ターゲティング)幅広い顧客層をターゲットにする無差別型マーケティング(ただし、地域や店舗規模により微調整)
P(ポジショニング)低価格・高品質・豊富な品揃えの3つを同時に実現する「コストパフォーマンス重視」のポジション

ニトリは、製造から物流まで一貫した体制(SPA:製造小売業モデル)を構築することでコスト削減を実現し、高品質な商品を低価格で提供しています。幅広いターゲット層に対し、きめ細やかな対応を行うことで、安定的な成長を続けているのです。

事例5:パナソニック「レッツノート」|ビジネス特化

パナソニック株式会社が提供するビジネス向けノートパソコン「レッツノート」は、明確なターゲティングで法人市場を開拓しました。

【レッツノートのSTP分析例】

要素内容
S(セグメンテーション)ビジネス利用、特に外出先でのPC使用を重視するユーザーで細分化
T(ターゲティング)外回りの多い35歳以下のビジネスパーソン(営業職、新聞記者、MR、教職員など)
P(ポジショニング)軽量・堅牢・長時間駆動に特化したビジネスPC、「働く姿が美しい」デザインも追求

当時、他社がパソコンのスペック(CPU性能など)を重視した商品開発を進める中、パナソニックは「持ち運びやすさ」に着目しました。

実際に現場を調査してニーズを把握し、機能面(軽量・頑丈・長時間駆動)とデザイン性の両立により、法人需要を満たすビジネス特化型PCとしての地位を確立しています。

STP分析を実施する際の6つのコツ・注意点

STP分析を効果的に実施し、成果につなげるための重要なコツと注意点として、

  1. 分析の順番にこだわりすぎない
  2. 顧客目線を失わない
  3. 市場規模と成長性を確認する
  4. 実現可能性を考慮する
  5. 分析だけで終わらせない
  6. 他のフレームワークも併用する

の6つを紹介します。

①分析の順番にこだわりすぎない

STP分析は、必ずしも「セグメンテーション(S)→ターゲティング(T)→ポジショニング(P)」の順番で実施する必要はありません。市場や状況によっては、ポジショニングから考えて適切なターゲット市場を見つけるケースもあります。各要素は密接に関連しているため、どこから分析を始めても結果に大きな差は生じないのです。

たとえば、

「P→T→S」

「T→S→T→P」

など順番を入れ替えたり、各要素を行き来しながら試行錯誤することで、より効果的なマーケティング戦略が確立できるでしょう。柔軟な発想で進めることが大切です。

②顧客目線を失わない

分析を進める際、自社にとって売りやすい方法や戦略を考えることも重要ですが、常に「顧客にとってどのような価値があるか」を問いかけることを忘れないでください。自社都合中心の分析では正確な結果が得られません。

顧客の購買決定要因(KBF:Key Buying Factor)を深く理解し、その文脈で独自の価値を定義しましょう。いくら高機能でも、それがターゲット顧客の課題解決につながらなければ意味がないのです。

③市場規模と成長性を確認する

STP分析で適切な市場が見つかっても、そもそも市場規模が小さかったり、成長が見込めない場合は収益が得られない可能性があります。最適なポジションを見出せたとしても、その市場が事業展開に適しているとは限りません。

市場規模や成長性は、官公庁(e-Statなど)、民間の調査会社、金融機関などが定期的に調査しています。インターネットでこれらのレポートを検索し、客観的なデータに基づいて市場の妥当性を確認しましょう。

参考:官公庁(e-Stat)

④実現可能性を考慮する

ターゲティングの際、市場規模や成長性だけを見て「魅力的な市場だ」と飛びつきたくなるかもしれません。しかし、その市場の顧客に対して自社がもつ製品や価格、販売チャネル、プロモーション手法で現実にアプローチ可能かどうかを冷静に判断する必要があります。

素晴らしい製品があっても、それを届ける手段がなければ絵に描いた餅になってしまいます。自社の体力やリソースに見合ったターゲット選定が重要です。

理想と現実のバランスを取りながら、段階的なアプローチも検討しましょう。

プロモーションの詳細はこちらの記事にて紹介しています。具体的な流れや成功事例を紹介していますので、プロモーションへの知見も深めたい方はぜひチェックしてみてください。

⑤分析だけで終わらせない

STP分析を実施しただけで満足してはいけません。分析結果を具体的なマーケティング施策に落とし込み、実行することが重要です。

また、施策を実行した後には、結果を評価しフィードバックを取り入れましょう。

施策が期待通りの成果を上げているかを継続的にモニタリングし、PDCAサイクルを回すことで、より効果的なマーケティング戦略を実現できます。

定期的(年1〜2回)にSTP分析を見直し、市場変化に対応し続けることも大切です。

⑥他のフレームワークも併用する

STP分析は強力なフレームワークですが、それだけでは自社の強みを適切に把握できない可能性もあります。より深い洞察を得るためにも、他のマーケティングフレームワークを併用しましょう。

たとえば、SWOT分析やPEST分析を組み合わせることで、外部環境や内部資源をより総合的に評価できます。

また、4P/4C分析を活用することで、戦略を具体的な施策に落とし込めます。多角的な分析を行うことで、より精度の高い戦略立案が可能となるでしょう。

STP分析に関するよくある質問

STP分析について、よくある質問とその回答をまとめました。

  1. STP分析はBtoB企業でも有効ですか?
  2. 小規模企業でもSTP分析は必要ですか?
  3. ポジショニングの軸はいくつ設定すべきですか?

同じ疑問をお持ちの方はぜひ確認してみてください。

Q1:STP分析はBtoB企業でも有効ですか?

BtoB企業でも非常に有効です。

BtoB企業の場合は、生産財市場向けの変数(業種、企業規模、購買方針、使用頻度など)を使用してセグメンテーションを行います。

ただし、実際に商品・サービスを扱うのは企業の担当者(個人)であるため、消費財市場の分析観点(年齢、役職、決済権の有無など)も持ち合わせることで、より緻密な分析が可能です。

むしろBtoB企業は、意思決定プロセスが複雑で購買サイクルが長いため、ターゲット顧客を明確にすることで効率的なマーケティング活動ができるでしょう。

Q2:小規模企業でもSTP分析は必要ですか?

限られたリソースの小規模企業こそSTP分析が重要です。

小規模企業は大企業と比べて人材や予算、時間などのリソースに制約があります。だからこそ、STP分析で明確にターゲットを絞り込み、集中型マーケティングで特定市場に注力することが効果的です。

すべての顧客にアプローチするのではなく、自社の強みが最も活きる市場を見極めることで、限られたリソースを最大限に活用できます。小規模企業だからこそ、戦略的なマーケティングが必要なのです。

Q3:ポジショニングの軸はいくつ設定すべきですか?

基本は2軸(X軸とY軸)で、視覚的に理解しやすいポジショニングマップを作成します。

2軸のマトリクスで表現することで、競合他社と自社の位置関係が一目でわかり、空白地帯(ニッチ市場)も発見しやすくなります。3軸以上にすると複雑になりすぎて、視覚的な理解が難しくなるためおすすめしません。

軸の選び方としては、顧客が商品選択時に重視する要素を選ぶことが重要です。

たとえば「価格×品質」「機能性×デザイン」「専門性×手軽さ」など、ターゲット顧客の購買決定要因に基づいて設定しましょう。

まとめ

STP分析は、市場を細分化し(S)、ターゲットを選定し(T)、ポジションを決定する(P)、マーケティング戦略立案の基本フレームワークです。

顧客ニーズの正確な把握、限られたリソースの最適化、競合他社との明確な差別化を実現できます。重要なのは、STP分析を実施するだけでなく、他のフレームワーク(PEST分析、3C分析、SWOT分析など)と組み合わせることでより効果的な戦略が構築できることです。

また、分析結果を具体的な施策に落とし込み、PDCAサイクルを回して継続的に改善していくことが成功のカギとなります。

市場環境は常に変化しています。定期的にSTP分析を見直し、時代や顧客ニーズの変化に対応することで、持続的な競争優位性を確立できるでしょう。

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