肖像権とは、容貌・姿態を承諾なしに撮影したり、公表・利用されたりしない権利のことです。
タレントや芸能人などの有名人にも肖像権は適用されるため、写真やイラストを使用する際は、肖像権を侵害しないよう注意する必要があります。
そこで本記事では、有名人の肖像権や問題なく写真やイラストを使用できる方法を解説します。
目次
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有名人にも肖像権はあります。ここでは肖像権について基本的な理解を深めましょう。
肖像権とは、自分の顔や容姿を撮影し、公表されない権利です。
肖像権は法律で明文化されていませんが、平成17年11月10日の最高裁の判決などにより、人格権としての肖像権が認められています。
最近ではスマートフォンやSNSの普及とともに、肖像権に関するトラブルは日常的に起こりうる問題として、一般的に知られるようになりました。
肖像権を侵害することそのものは犯罪にはあたりませんが、被写体となった人物から損害賠償を請求されるなどのリスクが伴います。肖像権を侵害した際のリスクについては、のちほど詳しく解説します。
肖像権とよく混同しやすい権利に、著作権があります。著作権とは、著作者が自ら創作して表現した著作物から得られる利益をすべて享受できる権利のことです。
たとえば、有名人を撮影して公表することは肖像権の対象ですが、写真をもとに制作した有名人の写真集は著作権の対象となります。そのため、有名人の写真集を無断で転載した場合には、著作権の侵害に該当します。
また覚えておきたい肖像権との違いは、著作権を主張できるのは「製作者」にある点です。写真集であれば、著作権があるのはカメラマンです。被写体となったタレントや俳優などの有名人には著作権はないと考えられています。
肖像権は、パブリシティ権やプライバシー権という2つの権利から構成されています。
パブリシティ権とは、商業的価値をもつ有名人の財産権を保護する権利です。有名人の肖像権を考えるときは、主にパブリシティ権のことを指します。
芸能人やスポーツ選手、アーティストなどは、顔や氏名などの情報が一般人の興味・関心の対象となり、経済的価値を生み出します。たとえば、「女優〇〇が使用している化粧品」と訴求すると、一般人がPRするよりも注目を集めることが可能です。
そのためパブリシティ権は、有名人がもつ顧客吸引力を他の誰かが無断使用することを防止する権利といえます。
プライバシー権とは、有名人だけでなく誰もが保有している個人の人格権を保護するための権利です。わかりやすくいうと、私生活を誰かにむやみに公表されることを防ぐ権利のことです。
プライバシー権で保護される権利には、以下のような情報が含まれます。
・氏名
・住所
・電話番号
・勤務先や学校名
・家族構成
・病歴・交際歴・犯罪歴
また個人の顔や姿を無断で撮影し、公開することも、プライバシー権の侵害に当たる場合があります。
有名人を起用しようと考えている場合は、事前に十分な知識を持っておくことが重要です。そこで、ここでは有名人の肖像権侵害にあたる場合とあたらない場合について具体的に解説します。
有名人の肖像権侵害にあたる場合について、プライバシー権とパブリシティ権の両面から考えます。
プライバシー権の侵害を判断するポイントになるのは、「有名人かどうか」「人物を特定できるかどうか」「公な場所かどうか」「拡散性は高いか」といった点です。
たとえば、商業施設で個人の容貌がわかるように写真を撮り、インターネット上に公開した場合にはプライバシー権の侵害にあたると考えられます。
有名人の場合にも同様の権利が認められます。ただし、有名人の場合には盗撮などの不当な手段やプライベートな空間を除き、肖像権の保護が制限される場合があります。
パブリシティ権の侵害にあたる具体例は、「有名人の肖像を、商業的な広告宣伝活動に使用する」「有名人の肖像を使用した商品を販売する」「メディアにタレントの肖像を掲載する」などが挙げられます。
たとえば、有名人のブロマイドや写真集などは、肖像そのものが鑑賞の目的となる商品であるため、パブリシティ権に該当します。そのため、これらの肖像を使用する場合は被写体となる本人の許可が必要です。
有名人の肖像権侵害にあたる場合について、プライバシー権とパブリシティ権の両面から考えます。
・本人の同意を得ている場合
・一般的な風景写真に写り込んだ場合
・個人の特定が難しい場合
・個人間で肖像がやりとりされた場合
たとえば、風景が目的の撮影に人物が写り込んだ場合や、SNS・Webサイト上などの拡散性の高いところにアップしない場合には、肖像権の侵害には該当しない可能性が高いといえます。
・本人の同意を得ている場合
・肖像を大々的に使用したもので利益を得ることが目的でない商品の販売である場合
・報道に使用される場合(誹謗中傷を目的とせず、事実に則った報道の場合)
・動物やキャラクターの場合(著作権や商標権侵害に該当する可能性はある)
パブリシティ権の侵害にあたらないとして参考になる判例がありましたので、紹介します。
2012年、ある週刊誌が女性歌手グループ「ピンク・レディー」を題材に、無断でピンク・レディーの写真14枚を掲載し、ダンスの振り付けをもとにダイエット方法を紹介しました。
その内容がパブリシティ権の侵害にあたるとして損害賠償請求を求めましたが、最高裁は「パブリシティ権の侵害には該当しない」と判決を下しました。
判決理由には以下の2点が挙げられています。
・記事の内容が、ピンク・レディーの紹介ではなく、ダイエット方法の解説であること
・雑誌200ページに対し、該当ページが3ページという使用状況であること
この裁判は、日本ではじめてパブリシティ権に争点を当てて行われた裁判として、大きな注目を浴びました。そのため、パブリシティ権について検討する際に参考にすると良いでしょう。
無断で有名人の写真やイラストを使用し、肖像権を侵害した場合には、以下のような民事上の請求を受けることになります。
・侵害行為の差止請求(第112条)
・損害賠償の請求(民法第709条・719条、第114条)
・不当利得の返還請求(民法第703条・704条)
・名誉回復などの措置の請求(第115条)
また肖像権だけなく著作権侵害に該当する場合には、刑事上の罰則を受けることにもなります。著作権や出版権、著作隣接権の侵害と認められれば、以下の罰則が定められています。
・10年以下の懲役または1,000万円以下の罰金
・著作者人格権、実演家人格権の侵害などは、5年以下の懲役又は500万円以下の罰金
・法人による侵害(著作者人格権侵害、実演家人格権侵害を除く)は、3億円以下の罰金
またパブリシティ権を侵害し、訴えられると報道やSNSに取り上げられ、多くの人から注目を浴びることになるでしょう。
その結果、取引先や顧客などからの社会的な信用を失い、売上の低迷や取引の停止などにつながる可能性もあります。こうした社会的な制裁を受ける可能性があることも大きなリスクといえます。
最後に、有名人の肖像権を侵害することなく使用する方法を紹介します。
有名人本人や所属事務所と、直接契約をすることで肖像を安全に使用できます。パブリシティ権を侵害しないために、広告宣伝に関する契約を締結するケースがよくあります。権利を明文化できるため、トラブルになる可能性を大幅に減らせるでしょう。
ただし直接契約の場合には、高額なコストが発生することや、交渉に多大な労力がかかることが考えられます。法律に関する内容であるため、知識や経験がなければ難しい交渉になるでしょう。
キャスティング会社や広告代理店に依頼することで、直接契約よりもスムーズな契約が可能です。
有名人を広告宣伝に起用する際、複数の事務所とやり取りすることが一般的です。その際、キャスティング会社や広告代理店に依頼することで、事務所とのやり取りを一律で行ってくれます。
ただし、キャスティング会社や広告代理店に依頼する場合も、高額なコストが必要です。
最近では、直接契約以外の方法としてタレントサブスクを利用するケースが挙げられます。
タレントサブスクとは、毎月定額の利用料を支払うことで、タレントの肖像を広告宣伝に起用できるサービスです。
タレントサブスクを利用すれば、キャスティングの知識や経験、煩雑な手続きも必要なく有名人の肖像を活用できます。
その理由は、サービス提供企業が有名人の所属事務所と正式な契約を締結しているためです。きちんと契約条件に沿って活用すれば、肖像権侵害になることはありません。
タレントサブスクの料金は、月額30万円~50万円程度が相場です。直接契約するよりも大幅にコストを抑えられるため、注目を集めているサービスです。
また肖像権侵害のリスクに不安がある場合にも、タレントサブスクを活用すれば、安心して画像やイラストを使用できます。
タレントサブスクの詳細はこちらで解説していますので、あわせてご覧ください。
この記事では、有名人の肖像権に関する概要から、法的リスク、肖像を使用する方法を解説しました。これらの知識を活用して、安全に有名人の画像やイラストを使用しましょう。
有名人本人や所属事務所と肖像権に関する契約をするには高額なコストや法律に関する知識が必要です。そのため有名人の肖像を使用する場合は、タレントサブスクがおすすめです。
「ACCEL JAPAN(アクセルジャパン)」は、数多くの著名人の肖像を広告宣伝に起用できるタレントサブスクサービスです。初期費用0円、月額40万円からの3つのプランをご用意しており、用途に応じて利用できます。
サポートも充実しているため、はじめてタレントサブスクを利用する企業様にも多くご利用いただいています。詳しくはアクセルジャパンの公式ホームページをご覧ください。