今夏、アクセルジャパンのアンバサダーとして加わった松嶋尚美さん。プライベートでは2人の子どもを持つ母であり、80代の母親の介護をされています。
タレントとして忙しく活動しながら、子育て、さらには介護にも明るく取り組む、その裏には、介護職の方の手厚いサポートがありました。急速な高齢化、人材不足、地域格差…と様々な課題を抱える介護業界に、タレントとして何ができるのか?
アクセルジャパンへの参加をきっかけに考えるようになったという松嶋さんに、介護への向き合い方や福祉・介護業界への思いを聞きました。
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――松嶋さんは2021年からお母様を大阪から呼び寄せて在宅介護をされているそうですね。どんな経緯で同居をされたんですか?
もともと母は大阪で一人暮らしをしていたんです。ところが2020年に膝の手術をすることになって、退院後に一人ではあぶないということで、大阪の妹家族と住むことになりました。
母は車椅子になったので、妹がケアマネージャーさんと連携を取ってデイサービスを受けていました。しばらくした頃、今度は妹が大きな病気をしてしまって。20代なかばの姪が面倒をみるよ、と言ってくれました。
でも姪はおばあちゃんに育てられた時期もあったので、同居してみるとケンカすることも多かったんです。
――近しい関係だと、お互い言いたいことを言ってしまいますよね。
姪たちは自分のお母さん(松嶋さんの妹)の心配もありますし、私としても若い彼女たちの将来が心配で、申し訳ない気持ちがありました。
そう思いながらも、私は東京に家族がいる。どうしようとなっていたら、夫が「お母さんをうちに呼ぼう」と言ってくれたんです。それがきっかけで「東京においで」となりました。
――お母様はすんなり東京に来てくれましたか?
大阪で80年以上暮らしてきた人なので、嫌がるだろうと思っていました。だからお寿司屋さんに連れて行って「ようこそ東京へ」とウェルカムパーティーで迎えて、うまく同居にスライドしようと考えていたんです。
うちの子ども達もまだ8歳と10歳だったので、「おばあちゃんをポケモンセンターに連れて行く」とか「俺のサッカーを見に来て」とか歓迎ムードを作ってくれたんです。
一旦は大阪に帰りましたが、大阪のケアマネージャーさんに東京での様子を聞いたら楽しかったようで「正式においで」となりました。
――いよいよ同居がスタートしてみて、どうでしたか?
大阪では介護用品のレンタルサービスを利用していたので、東京でも同じサービス会社さんから借りたいとなって、マンションに来てもらってベッドのタイプやお風呂に必要なものなんかをみてもらいました。
帰られるときに「ケアマネージャーさんはいますか?」と聞かれて、「大阪にいます」と答えたら「違う、違う」と(笑)。そこではじめて、引っ越したら住んでる地域のケアマネージャーさんが必要だとわかったんです。
――そこから介護の手続きをされたんですね。東京のケアマネージャーさんはいかがでしたか?
いろいろ整えてもらいました。母の調子が悪かったので、「病院のドクターに週1️回来てもらいましょうか?」「ナースの方も必要ですか?」「家の工事はどうしましょうか?」と全部聞いてもらって。
どこで手続きしたらいいか、行くべきところの道しるべをつけてくれました。
――はじめての介護で特に苦労したところはどこでしたか?
高齢者の生活がわからないんです。それまで大阪に年2回は帰って、旅行にも一緒に行ってたんですけど、基本的に母は妹が看てくれてたし、私は子どもに一生懸命だったから、詳しく見れてなかったんです。
ケアマネージャーさんにデイサービスを提案されたときも、大阪から東京に来てるし、知らん土地で1からデイサービスに通うのは嫌がると思っていました。母に対し「私ら家族が守るからな」ってカゴの鳥みたいにしてたんです。
けど、ケアマネージャーさんが「大阪でも通ってらっしゃったし、社会のつながりはある人だから」と言われて「一回行ってみる?」となったんです。
そしたら気に入ったみたいで、1ヶ月後にはもう1日、もう1日と増えて。いま、週6日なんです(笑)
――ケアマネージャーさんがきっかけでお母様の新しい面が発見できているようですね?
そうなんです。最初の頃は何もわからんから、食事もすべて小さく切って、お箸とフォークとスプーンを出して、好きなやつで食べてなとやっていました。
そしたらケアマネージャーさんに「やめてください」と言われたんです。「お母さんには考える時間が必要です。骨をどうしようか、ハンバーグはフォークで割ろうか。時間はかかりますけど、お母さんのためを思うなら、そのまま出してください」と。
母が苦労して食べるのを見てるのは、意地悪じゃないかと思ってましたけど、そうじゃない。たとえば以前は体を全部洗ってあげていましたけど、いまは「前は自分で洗ってね」と言っています。
――デイサービスのスタッフさんとはどんな感じですか?
デイサービスには2️か所通っています。1つはベテランスタッフさん中心のところで、もう1つは若いスタッフさんのところ。
特に若いスタッフさんはすごくパワフル。母に聞いたんですけど、雨が降って散歩に行かれへんとなったら、「ドライブ行く?」と連れて行ってくれたみたいで、うれしそうに話してました。
寒い日なんかは、「今日のデザートはぜんざいです!」と手作りしてくれて。大変やと思うねんけど、あんたらにパワーもらうわ、くらいがんばってくれてて。それでいて専門知識はもってはるから、すごいんです!
――在宅介護では利用できるサービスや商品も増えています。これから利用してみたいもものはありますか?
母を病院に連れて行く日があるんですけど、5つの診療科を回っているので、その日は1日がかり。私も仕事があるので、スケジュールのやりくりが大変なんです。
そういう家族が付き添えないときに介助してくれるサービスがあると聞いたので、利用してみたいです。ほかにも、薬を代わりに取りに行ってくれるサービスや髪を切りに連れて行ってくれるサービスも、便利だなと思います。
――利用者の立場からこんな介護サービスがあったらいいなというのはありますか?
いま高齢者に免許返納をすすめたり、カーシェアが普及してクルマのない家も多いですよね。家にクルマがあっても、1ヶ月に1〜2回なら家族に連れて行ってと言えますけど、1日に2回どこかに連れて行っては言えないですよね。
そういうときに高齢者も自分の足となるクルマがあったらいいなと思います。30分に1回こことここを回りますよと、コミュニティバスのような介護タクシーがあったら利用しやすい。そういうのがいっぱい増えるといいなと思います。
――実際に在宅介護を始められて3年が経ちます。介護職の方は松嶋さんにとって、どんな存在ですか?
ケアマネージャーさんは、母のマネージャーなんですよね。私に仕事のマネージャーがいるのと同じです。
たとえば、母がデイサービスの日にちを増やしたいと言って、家族が反対していてもケアマネージャーさんは「私はお母さんのケアマネージャーですから、お母さんの要求を前向きにとらえたい」と言ってくれる。
そこはホッとするというか、家族の言う通りを母に押し付けることがないようにしてくれてます。デイサービスのスタッフさんにも「ああ、久しぶり!今日は来てくれた」と迎えられてるのをみると、ちゃんとしてもらってんねんなと思います。
帰りも「気を付けて、また明日」と送られたら、そら毎日行きたくなる。頼りがいがあって、信頼できる人達です。
――最後に福祉・介護業界の方にメッセージをお願いします。
いつも自分の親に丁寧にしてくれるのが伝わって、感謝しかないです。私たちはもちろんのこと、母本人が一番感謝してると思います。
母は私たちに「生活変わったやろう。ごめんやで」と申し訳ない気持ちがあるなかで、同世代で集まって気にせずにおれる居場所があって、スタッフの人らがやさしいのはたまらんと思います。最初は病院嫌いやし、嫌がるかなと思ってたんですけど、全く違う。
どうしたら利用者さんによろこんでもらえるか考えてくれてるのがわかって、私も業界のイメージが変わりました。
アクセルジャパンのアンバサダーは広告という立場ですけど、そんないい人達が集まる業界の後押しができたらと思います。一緒に盛り上げていきましょう!
プロフィール
松嶋 尚美さん
1971年生まれ、大阪府東大阪市出身。1993年よりお笑いコンビ・オセロとして活動。2008年に結婚。2011年12月に長男・珠丸くん、2013年6月に長女・空詩ちゃんを出産。2013年のコンビ解散後もソロとして活躍。デビュー当時から52歳になった今も天真爛漫な言動でお茶の間をわかせている。